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タリバン
タリバン
田中 宇(さかい) 著  光文社新書  定価714円(税込)
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 アフガンでの突然の「非対称戦争(個人あるいはそのグループと国家との戦争)」は、いい加減なイスラムに対する知識しか持たぬ塾長にとって、なにしろ新聞とかテレビでの表面的・部分的な情報だけでは、この本の表題である「タリバン」はおろか、あまりに不可解に思える事柄が多すぎたのである。

 インターネットを通じて入って来る情報からでも、この国を取り巻く問題が、いかに複雑なものであるかだけは浮き彫りにされてきた。

 この本はごく薄くて小さい本だが、タリバンを囲む幾つものことを教えてくれる。まず(パシュテューン・タジク・ウズベク・ハザラという)4つの民族とそれを支える幾多の種族。多数派のスンニ派と少数派のシーア派の関係。ソ連(共産主義)アフガン侵攻と、それに対抗する国内勢力、パキスタンの助勢と暗躍。担がれた前国王ザヒール・シャーの実らなかった近代化。冷戦の終結を願ってアフガンに有形無形の援助を与え、スティンガーミサイルという新兵器でソ連のヘリコプターに甚大な被害を与えて撤退に追い込みながら、その後「多発テロ」を招いたアメリカ。アメリカにかくまで憎悪を募らせたウサマ・ビン・ラディンと彼の親衛隊アルカイダ…。アフガンに接するタジキスタン・ウズベキスタンの持つ石油・天然ガス資源とそれをどうしてもアフガンを通って引くパイプラインを引きたい先進諸国。ソ連を破った後のイスラム軍ムジャヘディン(聖戦士)の活躍とその後の分裂の経緯などなど、このアフガンを分かりにくくする要素は無数にある。

 今回のアメリカのイスラム諸国を始めとする対応は急いだ割に念入りで、われわれにイスラムが一枚岩でないことを教えてくれた。同時にこのことは多くの謀略説の根拠にもなった。特に今回珍しく早めに賛成に回った中国は、裏ではウイグル自治区のイスラム勢力を抑圧するのに利用したし、併せて虎視眈々とタジキスタン・ウズベキスタンの資源を狙ってもいる。ロシアもかつての恨みを隠してアメリカに協力するのは、一つ穴のムジナと言ってもいいだろう。
 このような背景があって、難民キャンプで育った若者の通う神学校から生まれたのが、分裂し無政府状態の中でのムジャヘディン(元北部同盟の前身)の無法行為を正そうというであった。タリバンとは、コーランの言葉(アラビア語で)「学生たち」という意味である。

 もともとタリバンは、正義を旗印に生まれたものでる。問題はあまりに厳格な戒律の強制と、ガンダーラ石物の破壊など世界の指示を失ったこと、それにラディン率いるアルカイダとの結合であって、彼らだけを責められない背景にも思いを巡らす必要があるだろう。簡明で読みやすい本書はアフガンを理解する入門書として一読に値する。この地の『難民という名のしたたかな人たち』を知るためには、真紀子外相にもぜひ目を通して欲しいものである。
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