今こそ日本の<食>を考える時

 昨年末来、BSE(恐牛病)から、今年年頭のトリ・インフルエンザと、日本の食卓から外食産業を 直撃した。もしこれにブタの絡んだ病気が発生したら、それこそ一大パニックになることだろう。特にト リ・インフルエンザは風評被害と過剰反応から来る問題点も多く指摘されたが、もし多羽数飼育の生産者 の立場から見れば、他所ごとではないだろう。これらはすべて消費者・生産者それに外食産業それぞれの場で考えなければならないから大変である。

 逆にこれらの病気発生は、今後の日本の<食>を考える上で大きなチャンス  を与えてくれたことにもなったと言える。

  (2000 年日本主要食物自給率)  
穀類 小麦 砂糖類 いも類 豆類 野菜類 肉類 魚類
24.8% 93.9 10.9 52.6 76.6 37.8 51.1 53.7 98.4 55.8

 かつて「 非効率な農業保護よりも食料は安いところから買え」 という理論がまかり通っていた。その結果が本表の通り、日本のトータル40%を割る食料自給率という寒い現状で、これは先進国中最低の数値である。しかも、肉・卵の場合は、飼料作物のほとんどをアメリカに頼っていることから、飼料を加える と自給率はまだまだ下がることになる。

 今日本は、食料自給率の早急な改善と、それと相反するFTA(自由貿易協定)の早期締結という課題に直面している。問題はこの二律背反という難問を、どのように解決していけばよいのかということで ある。

 日本農水省は、長い間たれ流しともいえるような補助金付けの援助を関連農水産業者に行ってきた。 その結果が、この惨憺たる自給率とますます衰退を続ける現状を生んだのである。たとえば、日本農業に 配慮し過ぎたことで不調に終わったメキシコとのFTA交渉がもし締結されていたら、貿易上のプラスは2?3千億円に及んだといわれている。とすればむしろ、そうした利益の一部をプールして、農水産業足 腰の強い産業にするために活用を図るべきではないのか。いまや世界の貿易経済は、WTO(世界貿易機構)の枠組みから、当事国間のFTA締結への傾斜の機運が急になっている。

 FTAの取組みの遅れは、ますます開かれた貿易国としての日本の存続を脅かしかねないのだ。目下FTAをめぐる各国との交渉は山積してる有様だが、大局的な見地に立っての具体策が急務と言えるだろ う。

 目下BSEのために、アメリカからの牛肉の輸入はストップしたままである。飼育数の少ない日本と 違って、莫大な頭数のアメリカのウシの全頭検査はまず不可能だと思わなければならない。はたしてその 場合、いつまでも輸入禁止で済まされるのかどうか。

 また今BSEの影響として、吉野屋をトップに「牛どん屋」の品切れがマスコミで喧伝されているが、 これはリスクヘッジをしないまま一か所集中仕入れによって生じた経営上の失点と捉えるべきで本末転倒 である。これを契機に、政府も企業も消費者も「新しい食料安保の視点」から考えていかねばならないことなのだが、さてその自覚と対策は万全とは言いがたい。

 「ウシがだめならトリがあるさ」という軽い考えが、トリ・インフルエンザの発生で木端微塵になった。いまやトリ・インフルエンザはSARSとは比較にならない危険性をもってアジアの各地に蔓延している。「生きたままのトリの流通」など日本の発想では思いもつかないが、流通・家庭段階で、冷蔵・冷凍という手段が普及しない地域では一般的な流通手段だということを再認識させられたが、そうしたことが、爆発的な伝播と、人や他の動物への感染を惹き起こしている。問題はワクチンのないままヒト・インフルエンザへの変異が起きないこと、また残されたブタへの感染が、また別にブタを発生源とした疫病の発生がないことを祈るほかない。

 一方動物性食品であるウシ・トリで起きたこの問題は、生活習慣病の多発する日本の<食>に対する 大きな反省点だと見ることができる。従来の日本食への回帰が期待されるのだが、ここでも日本の沿海漁業の低迷が指摘されるのである。これだけすばらしい漁場を持ちながらも、55%という魚類の自給率は 異常という他はない。それには、20%といわれる生ごみ直行という食料の無駄も大きく影響しているこ とを知らねばならない。

 私たちは今こそこうした家畜・家禽由来の疾病発生を奇貨として、疫学面だけでなく経済面、加えて日 本の農・林・漁業の再生と多角的に取組むために、早急に硬直し陳腐化した農水省の機構を解体し、積極的に産業経済省・環境庁・教育科学省からの人材交流を行うことで、「脳淋水惨省症」治療のため、あらゆ る面で抜本的な治療(施策)を講じて行かなければ、日本の未来は限りなく暗いと言わねばなるまい。はたして「弥生型官僚システム」を徹底的に改革するための「縄文型システム」は作動するのだろうか。


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