ものは言ってみるものだ!

 日下公人氏の『数年後に起きていること』は痛快な本である。ここしばらく忘れていた『楽天主義」がムクムクと頭をもたげてきた。もう一人私を楽しくしてくれる人は唐津一さんで、氏の『日本のものづくりは世界一』共々ぜひ読んでほしい1冊である。

 両書に共通するのは、最近私たちが目や耳にしない、本当の日本の強さであり、「マスコミを信用するな」であり、面白いのは前者は「官製データや統計、それにエコノミストの言葉など信じるなであり、後者は「どこにもあるデータで日本の真の強さが分かる」というもので、そうしたことを一切報道しないマスコミを、手厳しく批判してる。もっとも両所の挙げるテータには違いがあるが・・。

 日下氏によると、大東亜戦争の開戦に当たって、石油備蓄量の調査に当たったのは、東大を卒業したばかりのたった一人の若者で、国家機密だとしてテータがどうしても入手できないため、過去のデータから、勝手に推察・予想して作り上げたものであって、結果は「1年ほどしか持たない」というものであった。

 ところがこの数字を信じ込んだところから、やむなく開戦になったが、結局石油は3年半持ったことになる。「もし実際の数字が把握できていたら戦争にはならなかっただろう」と言うことになる。始めて聞いた話だが、こんなバカげた話があるだろうか。

 私たち子供のころには、「石油の一滴は血の一滴」という標語があったくらいだが、その後日下さんも実際に自分でも同じ経験をしたことから、お上によるこの手の数字が、いかにいい加減なものかわかるというものだ。

 いい加減なデータほど怖いものはないのだが、我々はマスコミの報道とか、こうしたデータをすぐ鵜呑みにするクセがある。またエコノミストの採る数字は、すべて過去のものであって、実際には実情から遅れていることを指摘してくれる。

 唐津さんは、マスコミの取り上げる経済は(日本の最も不得手な)「金融関連」ばかりで、製造業の強さには一切目をつぶっていることのおかしさを指摘する。

 また取り上げたとしても、いつまでも「自動車」「IT機器」であり、ありもしない「空洞化」であり、中国の追い上げである。氏は、いろんなデータを元に、そうした誤った姿勢をぶった切っているが、マスコミは一向に誤りを正そうとしないと、切歯扼腕し地団駄を踏む。

 本書の帯書きには、「マスコミはなぜかくも愚かなのか!?
日本をミスリードし続けるマスコミの過ちを糺し、誰も報道しない「日本が勝ち続ける理由」を明かす」と、手厳しい言葉が踊る。本欄で、ことある事にマスコミのおかしさを言い続けてきた筆者には、まことに小気味いい本であり、あえて真理の書と言いたい。

 さてそれはそれとして日下さんだが、いくつも事例を挙げて「最近日本が自分の言葉でしゃべり出したところ、それが案外すんなりと世界が認めるようになってきた」と書いているが、そうした空気は我々にも充分感じられるようになった。

 拉致問題しかり。核武装問題しかりである。特に後者について、自民党の中にも批判する声があるが、チャイナの反響も大きかったし、アメリカのライス長官の反応も素早かった。安倍さんも、「非核三原則」の内、本音では誰も信じない「持ち込まず」だけは、もういい加減で外してもいいのではないか。言ってはみるものである。

 現在北朝鮮が核を持ったとしたら、東アジアは、チャイナ・ロシアという核保有国に囲まれてアンバランスが生じている唯一の地域である。かつて冷戦時代、ソ連がドイツに向けて核弾頭付きSS20という中距離弾道ミサイルを配備したことがあった。
その際ドイツはアメリカに、同じく核弾頭付きのパーシング・ミサイルの配備を要請し、結局ソ連はSS20をすべて廃棄処分にすることになった。

 この際きれい事では済まされない、核による「バランス・オブ・パワー」の必要性を認識しなければならない。日本が核を保有しない以上、アメリカに国内配備を委託することで本当の安全保障」を獲得するべきではないか。

 唯一の被爆国というだけで、「核」と聞けば拒絶反応を起こすのいかがなものか。悲しいことだが北朝鮮が「核」を持とうということ自体、「核」の恐怖から自分を守るためだということに気付かねばならない。

 日下氏によると、かつて日本は「人種平等を公式に始めて提案した国」だと教えてくれる。1919年、第1次世界大戦でドイツが降伏した際の(国際連盟のきっかけになった)でベルサイユ講和会議で、国際連盟の規約に「人種平等規約」を提案するのだが、アメリカのウィルソン大統領によって否決されたという事実がある。

 日下氏は、今日本が国連で同じ提案をしたら、間違いなく全員一致で可決されるだろうと言う。両氏は「誰がなんと言おうと日本が世界で最も美しく優れた国であり、世界がその一挙手一投足に注目し反応している事実」を教えてくれる。

 この「美しい国」日本を後生につつがなく残すために、今こそ私たちの取るべき道は、自信を持って世界に「はっきりとものを言うこと」ではないか。


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