藪睨み住宅ローン考(1) ・・・ サブプライムローンの破綻

 この(株式市場)世界は、どうも「懲りない面々」ばかりのようである。
 アメリカの住宅ローンの問題は、かなり以前より取り沙汰されていたのだが、金融資金の過剰流通からかどうか、まだまだ大丈夫という声に惑わされて、とうとう行き着くところに来たようだ。さなきだに8月の暑い日を一層暑くしているのが、アメリカ発「サブプライムローン」の破綻である。まだまだ混乱は続くだろう。

 当然ながら、破産したり大きな赤字を出したりした金融業者が続出、世界中全面的株安で、日本でもこれを契機に全面円高というおまけまで飛び出した。この世界に疎いので、いきおい「藪睨み論」になるが、日本の住宅ローンと比較した視点でアプローチしてみよう。

 まずサブプライムローンだが、サブすなわち「プライム=優良」でない、住宅希望者向け高金利ローンで、それが直ちにヘッジファンドに売り出されて、いわゆるジャンクボンド(ハイリスク・ハイリターン=低格付け・高利回り債券)になる。日本と違って保証人不要が原則だから、ローン不払いが出たら、そのままストレートに影響が出る。

 アメリカの場合日本と違うのは、マンションなど集団住宅でなく、ほとんどが木造個人住宅である。ここで重要なのは、アメリカでは住宅の売買は新築より中古住宅がほとんどなことだ。言い換えると、アメリカでは住宅は決して「不動産」ではなく、売買システムが完備している「動産」であって、一種の資産運用であり、投資(あるいは投機)という側面があることを知る必要がある。

 映画でもわかるように、アメリカ人は、熱心に庭の芝刈りを行い、壁のペンキ塗りをし、家具の手入れをするのは、ある意味、売る際に少しでも高く売れることを願っているための懸命な努力という意味もあるのだ。

これは同時に、住宅が「終(つい)の棲家」ではなく、収入や職業によって自由に移動でき、同時に住宅市場の値上がりや、メンテナンスの努力での付加価値の増加による利益が期待されることに繋がる。

 このことは、当然「投資や投機の対象」という意味を持っており、しかも広いアメリカでは、土地の値段はほとんど問題にされず、住居の状態が大きな比重を占めている。この点が、日本の土地バブル、そしてその崩壊とは大きく違っているところである。バブルショックでは「不滅の土地神話」が崩壊した。これは絶対に下がるはずがないと信じ切っていた土地価格が、あろうことかもろくも下落の一途を辿ったのである。


 ここでちょっとサブプライムローン(信用度の低い個人向け住宅融資)の概要に触れてみたい。

 サブプライムローンは、普通の審査を通らないような人向けに高金利で貸し出すもので、ローン自体は昔からあったものだが、最近では、ローンを貸し出すや否や、直ちに債権化して、ヘッジファンドとかに売却するのが一般化になった。そのため、貸し倒れが増えてきた場合リスクをかぶるのが、貸し主ではなくヘッジファンドに移ったことからモラルハザードが起こった。

 いわゆるジャンクボンド特有のハイリスク・ハイリターンだが、住宅の借り主に契約不履行者が激増したところから、ヘッジファンドの行き詰まりが激増したため、前々から言われながら、最後にババをつかんだものがバカを見たのだ。しかもそれが世界各地に起きたから、とうとう世界的株安に発展したことになる。

 家つくりの経済学(米澤正己)
   http://pdsi.cocolog-nifty.com/house/2006/02/post_db4f.html

 によれば、アメリカで一般的住宅ローンは、日本の住宅ローンとはまったく違った、ノンリコース(非遡及型)ローン「担保にした不動産以外に債務が及ばない融資」のことで、不動産そのものの収益力だけを担保にしたものだ。

 自分が住む住宅の場合の収益力とは、家賃を自分に支払い住宅ローンの返済に充てるというもので、住宅ローンが完済するまでは銀行などの金融機関と住宅の居住者が、その住宅の共同所有者として、また共同管理者として運営していくことが多い。

 途中で居住者が転居したりした場合は、建物の所有権は銀行に移り、居住者は居住していた間だけの家賃を支払っただけで、その後銀行に対してローンの残金が残るなどの負債が発生することはない。
優良な物件であって、住んでいる間に市場評価価格が上がれば、銀行にローンの残金を返済してから家を売り払い、利益を得て転居することも可能である。

 家を購入して所有するといっても限りなく賃貸に近い感覚で、住宅は社会的資産として、中古市場を通して継続して使われ続けることが出来るわけだから、せっせと芝刈りし、こまめに壁にペンキを塗るのも、資産価値を落とさぬための懸命の努力ということになる。

 アメリカの場合(日本との決定的な違い)は、プライムローンであっても、サブプライムローンであっても連帯保証人が不要と言うことである。なんでも「本人のクレジットスコア(カードでの未返済事故の大小・有無)と、過去数年分の納税申告書、プラス対象物件の査定価格だけで決まる」のだという。

 この連帯保証人不要は一般の企業、特にヴェンチャー企業でも当てはまるが、企業での失敗は「貴重な経験」になるが、住宅ローンやクレジットの未払いの場合はそうはいかない。ただ失敗しても親兄弟・親戚に累を及ばさない点では、日本人なら驚喜する制度である。一方アメリカでホームレスの多いのは、こうした楽天的なあるいは野放図な「消費性向」が生んだ結果なのだろう。

 ご存知のようにアメリカとは、企業でさえ売買の対象になる国である。気がつけばオーナーが代わっていたというのでは、とても「愛社精神」など生まれっこない。だから転職は箔にこそなれ、マイナスにはならない。会社が代わればまた収入が代われば、住宅の程度も代わってくる。そこで「住宅市場」が形成され、投資(あるいは投機)の対象となる。

 アメリカの平均的な都市部の住宅は、ほとんどが木造住宅で占められ、50年から100年近く使われ続ける。居住者はどんどん移り変わるから中古市場が発展する。売買契約は徹底していて、ちょっとした壁のシミやカーペットの傷もマイナスカウントになるので、そこは綿密に契約書と実物をチェックすることになる。

 余談になるが、アメリカの住宅会社で、日本人の客は「いいカモ」にされているらしい。契約書なんか不要の日本の方が大いに楽だが、連帯保証人という「鳥もち」がある。さていずれがいいのやら〜。特に今回の「サブプライムローンの破綻」は、アメリカ経済の行き詰まりと、低所得者の激増、アメリカにおける借金しても買い物という、消費中毒症状の深刻さを露呈したことになる。

 そうした中で、いたずらに「ドル紙幣」を印刷し続けてきたツケが表面化し、日本の外貨準備やアメリカ国債が「燃えるゴミ」化してしまうのか、おそらく夜もおちおち眠れない人が多いのではないか。

                      (次回につづく)


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