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大学再生 しかと拝見!
2008年3月の某日夜、たまたま衛星放送の無料チャネルで岡山の教育関連企業ベネッセ・コーポレーション提供のチャネルで、特別番組「ベネッセ教育リポート」を放送していた。本リポートの主旨は、
「教育改革関連法の成立に伴い、高度な専門知識をもった人材を育成する大学の重要性が高まっている中で、少子化・国際化などの社会状況の変化をうける大学の対応について、これからの大学進学のあり方を探っていこう」
と言うもので、幾つか大学の現状を紹介している。この番組により、「少子化の進行によって受験生全員大学進学時代突入」という現状から、大学の質的低下と経営破綻続出という危機的状況が喧伝されているが、こうした危機をバネに時代を先取りして、実績・業績を上げつつある大学の存在を知ることになった。
勿論依然として大学乱立の中で、公的資金の減少によって国公立・私立を問わず厳しい状態にあるのは確かだが、考えようではこの(頭脳産業と謂える分野にも、自由社会に即した競争原理が働くことになったのだ。今後すべての大学が、単に生き延びるだけでなく、何らかの形でその存在価値を高めていくべ
きことを示唆している。
以下同番組で取り上げられた大学の概要を紹介してみよう、
◎立命館アジア太平洋大学(APU)
同大は、2000年4月、大分県・別府市・学校法人立命館の三者の公私協力によって、別府市で開校した。
APUでは、従来の日本の大学にはなかった学生と教員の約半数が海外から集まっており、日英二言語を中心とした教育を展開している点、さらに目標として「アジア太平洋学」という新しいアカデミズム分野の構築を掲げている点など、画期的な教育システムとカリキュラムに注目が集まっている。
同番組では、英語による授業を採用している大学でも、学生のレベルに応じて程度を下げるケースが多いことが不満だったという女子学生が、ここでの充実した学業生活を送っているというコメントが紹介されている。また寮における学生同士の交流などを通じて、日本人学生にも次第に積極性・競争意欲が生まれているなどのメリットが取り上げられている。
また同大学では、地域交流やボランティア活動を重視しており、在学中にNGOを立ち上げ、大きな成果を上げている卒業生の例も紹介している。
もっとも印象に残ったのはインド人教授の「東・東南アジアだけで十数億の民の40%が若者で、彼らをターゲットにすれば、日本の大学が過剰で倒産の危機など考えられない」という言葉であった。こうした発想が、従来の閉鎖的・内向的な日本の大学改革の起爆剤となることを期待したい。
◎鳥取大学
鳥取県は日本では珍しい「砂丘」を持つところから、それを生かした観光や、乾燥地農業分野で知られているが、同大学では最近農業だけでなく、砂漠地帯での緑化問題でも貢献する取り組みが積極的になされており、同大学は、乾燥地研究センターとタイアップして、「アリド・ドーム」という乾燥地緑化の実験施設をつくり、砂漠化に悩む国からの留学生も増えている。いわば積極的な差別化によってその存在価値を高めているケースだと言えるだろう。
ご存じのように、温暖化・砂漠化を含む環境悪化・省エネ問題など、従来の積極的分野に代わって、消極的自然環境保全分野、あるいは静脈産業と呼ばれるリサイクル産業が注目されているが、過去の経験から日本はそうした分野の多くで、世界でもっとも進んだ技術を保有している。今後日本が当該先進技術によって、世界に貢献していく必要性を考えると、鳥取大学の存在が注目されてもなんら不思議ではない。
◎国際基督教大学(ICU)
ここで注目されるのが「リベラル・アーツ」という制度で、入学に際して専攻学部を選択するという一般大学と違い、当初はすべて教養学部(College of Liberal Arts)にはいって、幅広い科目を選択することで、在学中に自分にふさわしい学部へ進む形式を採用している。同大学の教養学部は、
「人文科学科 ・社会科学科 ・理学科 ・語学科・教育学科・国際関係学科 」
という6つの学科で構成されている。学生はそれぞれの学科に所属しながら、他の学問分野を自由に行き来し自らの学ぶべき焦点を見出すことになる。同番組では、外資投資関連企業に就職した卒業生が、「当初全く違った業種を考えていたのだが、教養学部で選んだ簿記や金融関連の授業から、自らの進路を決めた」と語っている。
学生が自分に適した進路を決めることは至難の業であり、しかもそれが最善の選択だったかどうかも疑問で、結局挫折して中途退社してしまうケースが続発している現況から見ても、学びながらじっくりと自分の道を選ぶことのメリットは計り知れない。
今後多くの大学で採用してもいいシステムではないだろうか。と同時に昨今問題視されている若者の常識とか教養の未熟さも解消されるはずである。
◎愛媛大学
昨今学生の授業態度の悪さを指摘する声は大きいのだが、──これにはなにも大学だけでなく中高生にも言えることだが──その背景として授業の稚拙さも指摘されるべきだろう。塾への傾倒には、学校授業のつまらなさ・面白なさが主因ではないかとすら思われる。こうして大学進学した学生が、中高生時代と同じような面白くない授業を受けさせられたとしたら、これはもう悲劇以外の何者でもない。
特に大学の場合、その原因の一として、大学の目的である「学問研究の場」と「学問教授の場」という二面性であって、そのためともすれば後者が阻害されてきたきらいがある。
愛媛大学では、FD(ファカルティ・ディベロップメント Faculty Development)という教員の授業内容や教育方法などの改善・向上を目的とした組織的な取組みを行っている事例が紹介された。ここでは授業カウンセラーとでも言える教師が、学生に授業内容・教授法について、よいところと悪いところを分けて書き取り、それを全員で協議した後教師にフィードバックして、授業方法の改善に積極的に取り組んである。
その結果として、問題点を指摘した学生の方も指摘事項が反映され、問題点が改善されたとしたら、授業が楽しく受けられるメリットと共に、自分たちから言い出した手前、真剣に授業を受ける契機になっていくだろう。すべての大学で取り入れて欲しい制度である。
◎千葉大学
同薬学部では、最新映像診断として半減期の短いアイソトープを含んだ試薬(放射性医薬品)をトレーサとして使い、検査用カメラで外部から臓器の機能等を調べことで、臓器や病巣などの状態をチェックし、それから出る放射線を利用して、外部から体内の様子を探るといった方法の最先端技術で、海外からの研究者や留学生の注目を集めている。
映像診断法としては、
CT(コンピュータ断層撮影 Computed Tomography)
MRI(核磁気共鳴画像法 Magnetic Resonance Imaging)
PET(ポジトロン断層法 Positron Emission Tomography)
などが知られているが、いずれもレントゲン画像での診断となる。一方放射線をトレーサとして外部から体内の様子を探る方法では、リアルタイムに病状の把握が行われ、またその進化形として、放射線の種類を変えたり、局部に治療薬剤を投与したり、あるいは今後病原の確定などを行ったりするなどということが期待できるところから、世界中でもっとも注目された分野なのである。
チャイナからの留学生は、自国にはない最新技術だとしてその習得に意欲をにじませていた。
以上だが、ここから日本の大学の進むべきいくつかの教訓が見えてくる。
1.少子化対策として海外からの留学生を積極的に獲得する
2.生きた英語の習得と併せて、日本語を海外に広めていく役割を果たす
3.自校の特コンセプトを明確にし且つ強化して、いわば「一校一長所」を明確に発信する
4.上記の強化によって新移民の拠点にする
<付 記>
地元の名誉のため補足すると、広島大学では、産学協同の推進に熱心で、縄文塾の古い塾友で、キリンビールのOBであるMさんも、コーディネーターとして参画している。目下の仕事は日本人の胃腸に適した「植物性乳酸菌」を使ったヨーグルトの開発に成功、目下胃腸に問題を抱えた人を対象に治験に似たテストを実施中とか。今後日本の大学再生の為の取り組みに大いに期待したい。