★脳が大きくなってチエが生まれた!
ヒトの脳は、
1.原始的な脳=脳幹=爬虫類の脳=情
2.やや発達した脳=小脳・中脳=哺乳類(ウシ・ウマの脳)=意
3.発達したヒトの脳=発達した大脳皮質=知
という3つの脳を持っていると言われています。これはヒトが、明確にこうした進化の過程を経てきたことの証拠ですが、このことはやはり直立二足歩行というロコモーションを獲得したことから来ています。
ここでごく分かり易く、爬虫類とウシ・ウマなど哺乳類、それに座った形では直立姿勢を示しながら、歩行は4足で行っているサルという3つの種と比較してみましょう。
写真(1)はトカゲ(爬虫類)ですが、頭頂が低くて扁平で、脊髄が頭部の真後ろに着いていることがわかります。このことは頭頂部が未発達で、しかも「後頭部連合野」がないことを示しており、ほとんどが脳幹という本能を司る器官だけで活動していることを示しております。
続いてウマ・ウシなどの代表される哺乳類ですが、頚椎の発達によって小脳・中脳が発達してきます。ところが、それでも窮屈な後頭部と、頭部の前に口吻部が大きく邪魔をしていることから大脳は未発達のままです。
では、「歩けば四足 座れば直立」という、ヒトと前記哺乳類の中間の霊長類ではどうでしょうか。当然両者の中間的状態を示しますが、ここで、チンパンジー(以下チンプ)の親子を見てみましょう。子供の場合はほとんどヒトと同じような横顔をしていますが、親になると口吻が突き出してきます。
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この口吻が邪魔をして前頭葉複合野の発達が阻害されます。当然四足歩行も後頭野の発達に影響を与えます。
ちなみに、子供のチンプが突然変異で、そのまま口吻が子供の時のまま成長したことが、ヒトへの進化を生んだという仮説もあるそうです。
これを「幼児成熟=ネオテニー」といいます。なんだかわかるような気がしませんか。
さてヒトは、直立二足歩行によって、頚椎・脊椎が眞下に移動することで、前頭・後頭部、更に側頭部、加えて引力のお蔭で頭頂にも隙間が生まれ、大脳皮質の譲発達を生みました。
★直立二足歩行が内蔵下垂と腰痛そして肩凝りが生んだ!?
さて直立二足歩行は、ヒトにどんな影響をもたらしたのでしょうか。まず最初に起きたことは、重力の影響をもろに受けて「内蔵下垂」が起きたはずです。プラス面では内臓下垂によって横隔膜の活動が盛んになり、肺臓の容積が拡大し、運動量と能力が拡大しました。多分頭蓋骨の拡大と容量にも影響して、大脳皮質が大ききなったのでしょう。また四足歩行では強い腹筋は不要でしたが、直立二足歩行というロコモーションによって、腹筋が鍛えられ、四足歩行獣の弱点である(露出した)腹部が強化されることになりました。
最大の利点=メリットは、内臓の受け皿である骨盤が大きくなったことです。骨盤が大きくなれば立った姿勢での安定感と運動能力が向上します。同時にお産に当たって、大きくなった頭蓋骨が通る道も大きくなるメリットも生まれましたが、それでもお産が大変で、結果としてヨチヨチ歩きすら出来ない「大きな未熟児」を産むことになったのです。
逆に二本足で立つデメリットとしては、ご存じ腰痛があり肩凝りがあり、膝の疾患があります。これも重力の影響であり、脳が大きくなり、身体が大きくなった代償でもあります。筆者の場合も、歳とってパソコンに没頭ともなれば、まず首・肩の凝りから、背中・腰にダメージが拡がり、なかなか根治しないばかりか、むしろあきらめの境地になっているのが現状です。

もっとも、そうした理屈・観点に立てば、バランスよく地面に垂直に立つことが、肩凝り・腰痛・膝の疾患の防止に繋がることになり、よく図鑑とか古い専門書で見かけるこんなヒト進歩のスタイルでは、猿人から原人までの段階で肩凝り・腰痛・膝の疾患で滅ぶ可能性が高く、どうも疑問だと言えそうです。
★雑食に適した「歯」に進化した
よく「タマゴが先か ニワトリが先か」と言いますが、ヒトはかなり早い時期に犬歯を失ってしまうと言う「負の突然変異」に見舞われています。ご存じのようにサル族は、すべて鋭い犬歯を持っています。ただネコ族やイヌ族のように、全ての歯が「ハサミ(鋏)状噛み合わせではなくて、奥歯は果実や木の葉を噛むための臼歯状です。
それでも鋭い犬歯は、外敵や他のオスとの戦いに有効です。ところが、そうでなくても無防備な地上での弱者にとって、犬歯の喪失は一大事と言うべき事件なのです。
ではなぜそんな大切な犬歯を失ったのか? それは犬歯を失ったデメリットをカバーする、より重要な事情があったからに他なりません。食の変化で犬歯がなくなったのでしょうか。
樹上の覇者でも、地上では弱者、結局「サバンナの掃除屋=スカヴェンジャー」に成り下がったヒトにとって捕食者の食べ残した屍肉が加わりました。もし犬歯が大きかったら縦に噛めても横や回転する噛み方が出来ません。
何でも食べることが出来る掃除屋は、下記「道具の使用・発明」という助けもあって、次第に他の掃除屋=ハイエナ・ジャッカル・リカオン・コンドルなどが食べられない、肋骨のあいだの肉や、骨を割って中の骨髄まで食べるようになったのです。
結果としてですが、ヒトにとっての最大のメリットは、前脚=手が自由に使えるようになったことでした。手の使用は脳の発達に繋がります。ヒトの技術革新は、すべて手の使用によって生まれたと言っても言い過ぎではないでしょう。もっとも当初は石器や骨器それに枝などの使用と加工に止まっていたのが、次第に高度な技術「ハンド・テクノロジー」という、ヒト独自の存在感を発揮するようになるのです。
★白目の出現
もう一つヒトに起きた突然変異を紹介しましょう。それは「白目(強膜)の出現」です。まず図鑑でも写真でもいいから、爬虫類と哺乳類の目に注目して下さい。まず100%白目が露出しないで「瞳(ひとみ)」の部分だけが出ていることに気付かれるでしょう。
では何故ヒトだけに白目が露出したのでしょうか。「白い部分は敵に見つかりやすいから」と言う学者もいるようですが、身体中に白黒のまだら模様を持ったシマウマさえいるほどのに、どうも的を得た答えだとは思えません。筆者の答えはこうです。
サヴァンナという地上生態系において、食物連鎖に関わる役割は、以下の三つに分類されます。一つは捕食者(プレデター)であり、二つ目は被捕食者(プレイド)、最後はサヴァンナの掃除屋(スカヴェンジャー)です。彼らの目の位置ですが、エサになる動物をよく見る必要上、捕食者の目は顔の正面に付き、一方捕食者をよく見張るために、被捕食者の目は両サイドに位置しています。そしてサヴァンナの掃除屋イヌ科の場合、その中間的な八方睨みの位置だといえます。これはワシ・タカ・フクロウなどの空中の捕食者の場合も、同じく正面を向いていることがお分かりでしょう。
ところがニッチの世界であった樹上生態系には、(前述のように)食物連鎖の仕組みがなかったため、強者も弱者もほぼ正面に目を着つけています。それが急に地上で新しい職業に就くことになったのだが、掃除屋であると同時に捕食を兼業していたヒトとしては、始終キョロキョロせわしなく、落ち着かない生活を余儀なくされたのであります。
そこでヒトは、顔を動かさないでほぼ180度見渡せる手段として、それまで無用の長物であった白目を活用する術(すべ)を身につけたのであす。こうしたヒトは、副産物として「流し目・送り目・上目遣い」から「白目を剥く」ことまで会得することになったのです。
★早産・未熟児が普通になった
ここでお産の問題を考えてみましょう。漸進的か断続的かは別として、ヒトは確実に脳を大きくしていったため、骨盤を大きくするだけでは間に合わなくなり、今度は身体を大きくしていきました。前述トゥルカナ・ボーイこと、前期原人ホモ・エルガステルは、まだ13〜14歳くらいだでしたが、もし成人すれ1.8mくらいになっただろうと言われています。
それでもまだ彼らの脳は、700ccほどで、今の人類の半分程度ですから、ヒトはただ骨盤と身体を大きくしただけでは、脳の拡大に追いつかなくなっていったのです。そこで次の対策として採用したのが、「未熟児で産む」という決断でした。
乳を飲む以外何も出来ないようなあのサルでさえ、生後すぐに母親の身体をしっかり掴む握力を持っています。しかも小ザルの頭脳と、親ザルのそれとは、そんなに大きな差がないということです。一方ヒトの子どもは、ほとんど知恵らしい知恵をまだ見つけていず、生まれてからも脳のサイズと智慧の両方を、徐々に成長していくということでこの問題を解決することになったのです。
さてそれがいつ頃だったかとなるとどうもまだ藪の中なのですが、それでもなお、ヒトは相変わらず難産で苦しめられているのです。
ちなみに日本人は、白人に比べて体重比で10%ほど脳が大きいというデータがあるそうで、このことは日本人の頭脳がよいということと、その反面、頭でっかちの六等身半が標準だということに繋がります。ガイジンのカッコ良さは、顔(頭)が小さいことですので、顔やスタイルを取るか、頭の良さを取るかという選択論になるかもしれませんね。
ただ最近日本では、ガイジン顔負けのスタイル抜群の若者が増えてきました。日本人があのフィギアスケートで、華麗な舞いを見せて世界のトップに男女とも数名も君臨するなど、果たして喜ぶべきか、それとも悲しむべきか、判断は読者の方に一任いたします。
閑話休題。そうした身体とお産の葛藤の中で、これもいつのことか不明なのですが、ヒトは発情の時期を失っていったのです。このことは反面いつでも産めるということに繋がります。。まだタマゴの時期や子どもの間に沢山死んでしまう種ほど、いわゆる多産多死ですがら、一回わずか一人の子どもを、不規則的に出産するということは、種の存続がある程度保証される必要があります。進化の過程でヒトは、いつしか比較的安定した生活を獲得していったことになります
★正常位という異常位
直立することで、チンプのナックル・ウオーク時代には突き出たお尻の下に着いていた女性器が、次第に骨盤の真下に隠されるよう移動してしまいました。逆にそれまで4足歩行で股間に隠させていた男性性器が露出するという皮肉な結果が生まれたのです。そのため四足歩行の動物のセックスの正常位である「騎乗位」が難しくなって、いわゆる「正常位」に変化してしまいました。
動物の取る「騎乗位=マウンティング・スタイル」は、その最中でも捕食者の襲撃などを見て取れて対応出来るのですが、ヒト性行為のスタイル=正常位では、それが出来なません。下手をすると一度に二匹(二人か?)に食べられてしまう恐れがあります。こうなるとセックスも命がけだったことでしょう。
こうしていくつものハンディキャップを抱え込んだヒトが、いつしか獲得していったのが、発情期の喪失であり、一度に一人の出産であり、早産であり、閉経後の生存でした。ご存じのように発情期を持つ野生動物は、子どもが産めなくなると即死が待っています、言い換えれば「死ぬまで産める」のです。
オスの場合も、衰えを見せるとメスを巡って次の挑戦者のチャレンジを受け、敗れると群を追われて、のたれ死する運命が待ちかまえています。
ところがキバを失ったヒトの場合、メスを争う性闘争が失われ、しかも閉経後も生存可能となることによって、娯楽としてのセックスが生まれてきます。このことが果たして、ヒトの進化にどんな影響を与えたかはつまびらかではありませんが、それがいわゆる「祖父母」の出現となって、食料調達に多忙な父母の役割を軽減することに繋がり、情報伝達能力が拡大し、そのことがまたヒトの進化に、大きく貢献していったことだけは確かなのです。
★祖父母時代の出現
未熟児を産むようになったヒトは、母親の力だけでそうした未熟児を育て上げることはどだい無理なはなしです。そこでヒトは、閉経して子供が産めなくなっても生き延びる手段を獲得しました。いわゆる「祖父母」という新しい世代を創造して、この難問に対処していくことになったのです。
三世代社会の到来は、他の野生動物がただエサやその取り方を教え、捕食者からいかに逃げるかという最低・最小限の伝達だけしか出来ず、あとは運を天に任せるという生活から、生き延びるためのより幅広い知恵や経験の伝達や、父母世代の自由な活動を出現させるという「生活革命」に繋がったといえるでしょう。
かくして次第に「万物の霊長」になった現在(いま)、日本では少子化という、内からの崩壊に直面しています。政府や関係機関が必死になって少子化防止対策を講じていますが、一向に効果が見えてこないのは何故でしょうか。
それこそ今の日本人が、かつてヒトが会得した「祖父母時代」を捨て去って、「核家族」と称してそれまでの野生動物並みの父母時代に逆行しているからであります。
祖父母からの教育や情報の獲得が出来ないで育った親たちが、まともに子どもたちを育て上げる自信がないのは当然です。また同じく祖父母からの教育や情報の獲得が出来ない孫たちも同様、ここに「親殺し・子殺し」の続発する原因が潜んでいるといっても過言ではないでしょう。
さて「サルからヒトへの移行、そして進化の過程」の締めくくりですが、
ヒトが樹上という楽園を離れておずおずと地上に降り、そこで前代未聞の「直立二足歩行」を始めたことから全てが始まった。
ということだと考えられませんか。